フオック・ティック陶器 フエ王室陶器の痕跡

フオック・ティック陶器 フエ王室陶器の痕跡

 
 

フオック・ティック陶器には500年以上の歴史があり、中部地域一体で非常に有名でした。フオック・ティック村では鍋や鉢、煮込み鍋、壺などの家庭用陶器の生産だけでなく、グエン王朝の王宮に献上された芸術性の高い製品も数多く生産され、 現在もフエ王立美術館に保存されています。

古い歴史によると、グエン王朝時代に王宮はフオック・ティック村に特別な例外を設けたそうです。つまり、村人たちは王のご飯を炊くために、毎年約400個の土鍋を宮殿に持って行かなければなりませんでした。また宮廷は、村民が宮廷向けご飯の土鍋と同じ形状の物を使用するのを禁じ、別の種類の土鍋を作らなければならないとし、発見した場合は厳罰に処すると規定しました。そのため、毎年2回、川を遡って土鍋を宮廷の城塞まで運んでいました。

長い間忘れ去られ、失われていたフオック・ティック陶器作りは復活し、発展しつつある。

撮影:タイン・ホア/ベトナムフォトジャーナル

土鍋は古代の人々が米を炊いたり、肉を煮込んだり、魚を煮込んだりするためによく使用した一般的な物です。しかし、フオック・ティック村の土鍋は特別であるため、王室の道具として選ばれました。フオック・ティックの土鍋の素地は厚く、こげ茶色で、壁を叩く音は鋭く、ひょうたんの壺のような形の取っ手が付いていて、ご飯を炊いたり、肉を煮込んだりしても大変美味しくなります。王が使用するために選ばれた品物であったため、フオック・ティックの土鍋は「オム・グー」と呼ばれ、王が使用した翡翠で煮込んだことを意味する「ゴック・オア・グウ・ズン」という非常に美しい名前も付けられています。

フオック・ティック村の陶器の職業について話しましょう。オ・ラウ川のほとりにあるこの村はフエ市中心部から北に約40キロメートル離れ、以前はケ・ドック村として知られていました。フオック・ティック陶器村は500年以上前からあったと言われています。グエン王朝時代には首都の主要な陶器生産地であり、製品は中部地方全域で使われていました。 

伝説によると、フオック・ティックの陶芸は500年以上前から存在していた。

撮影:タイン・ホア/ベトナムフォトジャーナル

村の長老たちは、フオック・ティック陶器が非常に大きく発展したのはグエン王朝になってからではなく、17世紀から18世紀にかけてだと語っていました。当時、村全体に十数の陶芸窯があり、オー・ラウ川の埠頭近くに点在していました。炉は一日中燃え続け、世界中から商人が売り買いに来て、ここの人々に富と名声をもたらしました。そのため、村には今も大きく荘厳な共同住宅が数多く残っています。

他の地域では陶器は縦型窯で焼かれることが多いのですが、フオック・ティックではヒキガエルのような形をしていることから「ヒキガエル窯」と呼ばれる平型窯が使われています。 炉は土で出来ており、長さは約30メートル、その上には茅葺きの屋根が付いています。 

現在も昔ながらの伝統的な製法で、作陶技術がほぼそのまま受け継がれている。

撮影:タイン・ホア/ベトナムフォトジャーナル

フオック・ティック陶器はオ・ラウ川から採取した粘土を使用し、伝統的な方法に従って非常に注意深く焼かれています。窯の造りがしっかりしていて火力が高く、常に火が燃えているので割れたり脆くなったりすることなく製品が出来上がります。フオック・ティック陶器は素朴で自然な外観が美しく、陶器の素地は磁器のように厚くてしっかりしており、外側は釉薬がかかっていませんが、陶器の自然な色はエナメルで覆われたような濃い茶色です。

時が経つにつれて、フオック・ティック陶器は忘れ去られ、失われていく時期がありました。近年、トゥア・ティエン・フエ省の伝統工芸品の修復・保存・発展政策により観光活動が活発化し、特にフエフェスティバルやフエ伝統工芸フェスティバルが毎年開催されるため、フオック・ティック陶器も復活して発展する機会を得ました。 

フオック・ティック陶器製品の美しさ。

撮影:タイン・ホア/ベトナムフォトジャーナル

今日、フオック・ティック古代村を訪れると、ベトナムで最も有名な古代村の美しさを発見するだけでなく、フオック・ティックの村人たちから古の陶器製造技術や歴史に関する多くの興味深いことを学び、体験する機会があります。

 

村の陶芸の保存と発展に尽力し、現在はフオック・ティック村最大の陶芸工房を所有している芸術家ルオン・タイン・ヒエンさんは「今の時代に、先祖が残した陶芸の仕事を継ぐのは家族を養う上で非常に難しいと分かっていても、もし辞めてしまったら、故人に対して罪を犯すことになります。したがって、この職業に情熱を持ち、それを発展させる方法を探し求めた私は、古くから伝わる職業を継承ながら、村の若者が伝統的な仕事を学ぶためのクラスを開いています」と心の内を語ってくれました。

 

フエ伝統工芸フェスティバル2023で展示されたフオック・ティックの陶器製品。
撮影:タイン・ホア/ベトナムフォトジャーナル


文、撮影:タイン・ホア/ベトナムフォトジャーナル



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